図書館とわたし

徳末愛子

 本学図書館が1903年に,誠に小規模ながら一応図書館の形態を整えてから今日までに,如何に多くの人々が

その恩恵を受け,心の糧を与えられたことであろう。

 私がはじめて目白の図書館に接したのは,1938年に附属高女の五年生になった春であった。大学の図書館が

使えると先生から聞かされたその日に飛んで来たのだが,入口でお目にかかった高田主事のお姿と,書棚に並ぶ

金文字の洋書に胸ときめかせたあの日の興奮は,今も私の胸に焼ついている。借り出したのは,Ivanhoeと

Jane Eyreであった。少し黒ずんだ金粉の残る頁を定規で切りながら読み進む楽しさ。その出会いが,英米

小説に一生のめり込んで行くよすがになろうとは……。 

 50年後,図書館をおあずかりすることになった私の仕事は,コンピュータの導入であり,往時の高田主事の

ように,行きずりの女学生に適切なアドバイスを与えることなど,私のはるかに及ばぬところであった。21世紀,

百周年を迎える図書館が,物心ともに充実して行くよう願って止まない。 (第7代図書館長)