一華開五葉

上村美紗子

 伝えたいことがあるんだ。きみのことが好きだから。果しなく続く長い道を君と歩いて行きたい。なんと十分な

心の伝え方であろう。相手ならずとも思わずハイと頷いてしまいそうである。一生に一度は,こんなふうに伝え,

伝えられてみたかった…。図書館にも,利用者の皆さまには,これだけは伝えたいということがある。そうする

義務や責任もあるだろう。果たして魅力あるおたよりであったかどうか…。100号などというこうした折節には,

姿勢を問われている気がする。

 現図書館長の西村圭子先生の就任のご挨拶は,「一華開五葉」という言葉から始められた。印象深く,一華は

五葉に開く,と覚えたつもりが,のちに,一華は五葉を開き,とわかった。達磨の語で,後に,結果自然に成る,

と続く。一つの花が五つの葉をしげらせ,みのりがおのずと成就する意である。が,なぜか間違って覚えた方を

気に入っている。図書館の軌跡の華は,歴代の図書館長の降るほどのご尽力と,多くの司書の人達の照る日曇る日,

限りない努力の道すじにほかならない。 (情報受入課長)