日本女子大学生であるということ

大沼真美


 日本女子大学という学園を,わたし(たち)は選んだ。人によってその積極性の度合が異なっても,「選んだ」という真実は

変わらない。でも,このことはあまり当たり前すぎて,あらためて深く意味を問うこともなく日々を過ごしているのではない

だろうか。

 『百合樹の蔭に過ぎた日』は日本女子大の学生として生きることを望みながら,外圧(戦争)によってそれを全うできなかった

先輩方の記録である。しかし,ここに描かれているのは「無念」などではない。時代が辛く厳しくても,毎日を喜び,瑞々しく

弾む女学生の姿。そしてこの思い出を50年間慈しみ温めてきた,一人一人の生の貴さが行間より馥郁と香りを放つ。

 伝統,と口にするのは簡単である。でも,このように歴史の一頁を駆け抜けた人々の真実は,わたしたちに,同じ日本女子大

学生であることの重みを伝え,後を継ぐ者への思いを鮮かに刻む。そして何よりも心に残るのは,綴られたことばの美しさと

文章のふくよかさ。このような先輩方を持っていることを,わたしたちは誇りに思えるだろう。(館員・和書係)