専門図書館協議会全国研究集会に参加して (諸井佐喜子)


 専門図書館と呼ばれる図書館をご存知だろうか。読んで字のごとく、特定の主題を専門的に取り

扱う図書館の総称なのだが、その実体は、国や自治体の研究機関に附属する図書室であったり、企業の

中の資料室であったりと実に様々である。大学図書館にとって比較的なじみの薄いこれら専門図書館の館

員が、年に一度全国から集まる、専門図書館協議会の平成8年度全国研究集会に、アドバイザーの一人と

して参加する機会を得た。

 6月6日、7日の両日にわたって、広島国際会議場で閉催された今年度の研究集会のテーマは「変革する

専門図書館一電脳空間への挑戦-」。

 講師、司会を含め、264名の参加者があった。私の出席した第二分科会は、「レファレンス駆け込み寺」と

題して、慶応義塾大学の田村俊作先生とゴールドマン・サックス証券会社の片岡洋子氏の司会のもと、大阪

府立中之島図書館の岡村敬二氏、日本経済研究センターの西岡紀子氏、国立国会図書館の福田理氏、そして

私の4人のアドバイザーが、あらかじめ参加者から提出されていたレファレンスの事例(利用者から寄せられ

た質間)に回答し、その調査のプロセスや利用した資料について、参加者全員で意見を交わすという内容だった。

 話し合われた事例は、たとえば、ある特定の県の中学浪人の実体について(人数やその後の進路など)、

献上品が将軍の手元に届けられるまでに通る江戸城内の経路、といった難問ぞろいで、レファレンスのベテ

ランであるアドバイザーにとっても簡単には回答できないものが多かったのだが、だからこそ、たとえ“電脳

空間”と呼ばれる時代になっても、根気強い地道な調査こそがレファレンスの基本なのだと、再認識させられ

たのである。

 これからの図書館員は、最新の電子メディアと従来からの紙のメディアと、どちらも自由自在に使いこなせ

なけれぱならず、やり甲斐があると同時になかなか厳しい時代になったとも言えるのではないだろうか。

 

 (館員・司書課程「参考業務・演習」担当)