日本女子大学図書館への期待 (亘理淑子)


 平素は一教員として,必要に応じて書物の閲覧や借り出し,また,参考係への問い合わせなどの

用で接していた図書館だったのだが,1995年度,1996年度,教授会から加わる図書委員とな

って,従来は気付かなかった図書館内の組織の運営についていろいろの資料に触れ,運営の実状

についての説明を伺う機会を得るようになった。こうして知り得たなかでもっとも感銘を受けた

のは,図書館長をはじめ図書館の職員の方たちが,多くの難問題を抱えながら,どんなに懸命に

誠意をもってその業務を運営されておられるか,ということである。もともと本学の図書館では,

閲覧者への対応が親切であることや参考資料の問い合わせ等に対して懇切に相談に応じてもらえ

るという評判は,学内者の一人として以前から知っており,実際に私もある折,不明のことを参考

係に問い合わせたところ,実に行き届いたお答えを頂いて感激したことがあった。しかし委員とな

ってわかったのだが,図書館は現在いろいろの多くの問題を抱えているといえる。その一つは,古

くからある図書館ではいずこも同じ悩みかとは思うが,手狭となって空間が足りないということで

ある。現在出版される書物の多量さ,研究,教育に必要とされる分野が広がり,また,分化してい

く事実を考えてみれぱ,容易に理解できるのだが,そのために必要な場所や建物というのがおいそ

れとは用意できない,ということが,困り果てる問題なのである。この問題は遠からず何らかの解

決策が講じられなけれぱならないのだが,そこに至るまでの間の,現場のご苦労は並大抵のことで

はないということがよくわかる。部門によっては,書籍のためのスペースは既に満杯で,外部の貸

倉庫を利用している状態である。次に直面させられている問題は,世にいわれている情報化時代へ

の対応と,そのための技術的移行を進める対策である。現今の情報化の技術の進み方はすさまじい

ものであり,研究,教育に必要とされる情報の蒐集,伝達のペースは昔日の比ではない。時代の急

速な推移に対して即応した設備と運用の為の技術能力が伴わなけれぱならない。たしかに1996年

度夏において,学内LANと図書館システムの接続がおこなわれるなど,新システム稼働のための作

業が順次おこなわれたのであるが,今後とも更なる改善が重ねられなければならない。大学図書館

のあるべき目的と意義を強く考えておられたのは上代たの先生でいらした。長年の在職者として知

っているのだが,現在の目白キャンパスの図書館が完成する以前の時期,本学の図書館は木造の建

物で現在の香雪館が建っている場所に存在していた。文学部研究室が入っている現在の図書館が完

成した時,上代先生のご構想により開架式とされ,それは当時としては目をみはる先進的な一歩だ

った。近年における出版物の多夥,惰報の技術の驚くぱかりの革新の趨勢は,奔流のような勢いで

21世紀へ向かって進んで行くところである。なじみを深めた目白キャンパスの図書館は,戦後から

20世紀末までの時代にその貴重な役目を果して来たのだが,新しい時代を目前にして,従来型の大

学図書館については一つの時代が終ったといえるように思う。 日本女子大学図書館がその貴重な蔵

書と,長い間に培われてきた,利用者の便宜をはかる献身的な配慮の精神とを共に保ちつつ,新世紀

の要望に着実に対応していくことを心から期待している。 (図書委員長・英文学科教授)