私の通学路 (都留薫 )
生田キャンパスは,門から10分ほど歩いた山の頂上にある。入学前,見学に来たことがある。夢に描いた華やかな通学路
の理想はそこにはなく,第一印象は,地震が起きても大丈夫だろうということだった。 自然の豊かさは,想像以上であっ
た。キジが横をトコトコ歩いていたり,タヌキが道を横切ったりする。タ方になると,校舎の上でカラスが集会を開く。
また,ぜんまいやワラビなどの山菜,たわわに実った稲など,いろいろ出没する。 私は動物も虫も自然も嫌いじゃない。
むしろ好きなほうだ。しかし,これらのものを見る度に友人達と,今日はこんなものを見てしまった,あんなものを見てし
まった,と田舎通学の悲しさを言い合ったものである。 ところが,ある日からこの山道を歩くのが楽しくなった。その日
は遅刻をしていたので,辺りには誰もいなかった。自分の足音かと思ったが,立ち止まってもコツコツという音がする。
上を見るとキツツキがいた。キツツキは,想像していたより,小さかった。北海道に行かなけれぱ見れないと思っていた
ので,ドキドキした。 これをきっかけに,悲しい田舎道は,私にとって楽しい散歩道に変わった。ほかにも,たくさんの
虫や動物との出会いがあった。 現代社会学科の和崎教授が,森の中へ帰宅するかのように消えていくのを見た,という噂
を耳にしたが,山の中の教授を発見できなかったのは心残りである。(文化学科4年次学生)